夫婦で4600万円! 医師の研究留学中の日米フェローシップ獲得のコツ

アメリカ留学

「留学したいんだけど医局にコネはないし、業績がないからフェローシップもとれないし..」と何もしないまま大学院生活を送っている人をたまに見かけます。私(妻)はそういう人を見る度に、「実はたいしいて行きたくないということだろうか?」とよく疑問に思っていました。本当に留学したいのであれば、嘆くよりコネや業績をどうすれば作れるかを考え行動するしかありません。

私たち夫婦は2人ともポスドク留学を希望していたため、業績のある夫に置いていかれないように(彼ならすぐ決まる)、大学院生の頃からいかに留学を実現させるかを考えて過ごしてきました。一大学院生にできることは限られていて、大きな論文は出せませんでしたが、自分でテーマを見つけて研究論文や臨床論文を書くことで論文業績を少しだけ増やし、フェローシップに応募し続けることで、結果として留学を実現させました。振り返ると作戦としては良かったし、よく頑張ったと思います。

今回はそんな2億り妻のフェローシップ獲得経験を中心にまとめていきます。私にできたのだから、これを読んでる留学希望の先生達にもできることは間違いありません。少し時間はかかりますが、できることを積み重ねて留学への扉を開いてください!

2億り夫婦のフェローシップ獲得状況

夫婦で4600万円、これは2億り夫婦が留学中に獲得したフェローシップの総計です。その中で、私(妻)が獲得したのは約1800万円、途中で辞退したものも含めると計5つ約2400万円を獲得しました。5つのフェローシップの内訳は日本の財団が4つ、アメリカの財団が1つでした。2億り夫婦の留学中の総収入についてはこちらの記事をご覧ください。

この結果だけ聞くと、大学院生の頃に大きなラボにいて業績が十分だったのではないかと思われるかもしれませんが、決してそんなことはありません。具体的には一つ目のフェローシップを大学院4年生で獲得した時は、研究論文3本(IF 5点 1本、2点 1本、日本語 1本)、レビュー3本(日本語1報、共著 2報)、臨床論文1本(日本語症例報告)という、人に誇れる業績では全くありませんでした(今もですが..)。

しかし、この中の半ば強引に書いた3本の研究論文がなければ、フェローシップは獲得できず、留学は決まっていなかったと思います。小さなテーマだったので上司にも迷惑もかけましたが、結果としては無事に留学につながり喜んでくれました。MD研究者は学位を取得する学年ぐらいであれば、まだ研究歴も浅く、小さな論文でもあるのとないのでは大きな違いになることがあります。

2億り妻のフェローシップ獲得作戦

私が留学を考え始めたのは大学院2年生でした。医局で最後に留学した人は10年以上前で、論文もほとんどない、まさにコネも業績もない状態でしたが、夫のタイミングを考えると、私の学位を取得後すぐに留学するしかなく、「絶対実現させよう」という気持ちと「本当に大丈夫だろうか」という気持ちの両方がいつもぐるぐるしていたのを覚えています。

しかし、留学を確実にするにはフェローシップを獲得することだと考えを切り替え、そのために必要なもの(=業績)を積み上げていくことに専念しました。その中でも、いくつか意識した点があるので以下にまとめていきます。

まずは相手を知る! どのフェローシップなら勝てる可能性があるのか

どんなフェローシップがあるかを把握するのは一番初めにするべきことです。私は応募時期や金額などをまとめたリストを作成し、どれに応募するのか作戦を練りました。難しいのは、全てに応募するのが得策ではなく、採択率が低く競争率が高いもの、つまり現状であまりに勝算が低いものはスキップする方がいい時もあるかもしれないということです。

私は学内選考があるものを中心に応募し、それ以外の採択率が10%を切る財団への応募は慎重に検討しました。理由は、「学内選考がある=応募数が限られている」からです。また、東大など業績のあるであろう候補者が多くいる施設からの応募も制限されるため、より勝算があると考えました。学内選考を突破し学長推薦をもらうのも大変ですが、自分の何倍もの業績をもつ人の中で勝ち抜くのはもっと大変です。

そして、次に大事なのが締め切り日から十分に余裕をもって準備し自分の納得のいく申請書を提出することです。大学院生の段階で、自分の研究内容や計画について上手に手早く書ける人はなかなかいいません。最初は何を書いていいのかわからず、時間だけがかかり、ストレスフルな作業になります。しかし、この作業をくり返すことで文章力がつき、フェローシップ獲得への道が開けるので、ぐっと堪えて頑張ってください。

今は科研費の書き方についての本などもいくつかあるので参考にしてもいいかもしれません。また作成した申請書を誰かに読んでもらいフィードバックをもらうのも大切です。

ご参考までに私が応募を検討したフェローシップのリストを添付します。応募の時期や資格(年齢制限や留学中の応募の可否等)を含め応募要項は変更になることがあるので、必ず財団のホームページをご確認ください

  応募時期 金額 (万円/) 年数 件数 学内推薦

留学中の申請

日本学術振興会 海外特別研究員 4-5 450620 2 130 不要
第一三共生命科学研究振興財団 4-5 300 2 5 不要 ×
持田記念医学薬学振興財団 4-6 50 1 20 不要 ×
アステラス病態代謝研究会 4-6 400 1 10 不要 ×
かなえ医薬振興財団 6-7 100 1 15 不要
安田記念医学財団 7 150 1 2 ×
東洋紡バイオテクノロジー研究財団 7-8 550 1 7? 不要 ×
武田科学振興財団 480 4(最長) 10 ×

上原記念生命科学財団 

9 340 1 160
内藤記念科学振興財団 10 450 1 10

×

枯れ木も山の賑わい 臨床論文も書く

留学するラボにもよりますが、1年目から論文を量産できる人はほとんどいません。また、大きなラボに所属しているだけで、共著がどんどん増えていくほど研究者の世界は甘くありません。そんな中、留学中に自力で業績を増やせる唯一の手段が臨床論文を書くことです。

勿論、理想としては研究留学中は研究に専念したいので、臨床論文は留学前に書く方が良いです。しかし、留学中にフェローシップに応募する中で業績を増やす手段の一つとして、平日の夜や休日に取り組むのはありではないでしょうか。

研究内容に関係のない論文がどこまで選考で有利に働くかは分かりませんが、業績が少ないうちは「枯れ木も山の賑わい」で、何でもないよりあった方がいいと思います。また、アメリカのフェローシップの中にはphysician scientistであることを評価してくれるものもあり、研究に支障がない範囲で執筆できるのであれば挑戦してみてください。

業績欄が埋まらない? 受賞や研究費の獲得を増やそう!

多くの申請書では、論文業績と受賞歴、時には競争的研究費獲得歴を含めて一定のページ数を与えられています。つまり、論文業績の少ない間は受賞歴や研究費獲得は業績欄を埋めるのに役立つということです。また、論文業績がある人の中でも、これらの業績は少ないという人もいるので、論文業績と受賞歴、研究費の獲得がバランスよく書かれている申請書は審査員の目をひくかもしれません。

各学会の学会賞やトラベルグラント、学内のYIAなどMD研究者には応募できる賞が意外と多くあります。どんなに小さいものでもいいので、まずは応募してみてください。少しづつ業績欄が埋まり、見栄えのいい申請書に近づいて行きます。また、研究費の獲得はMDの学位があれば応募できるものも多いので、こちらも大学院生のうちから積極的に応募してみてください。

No try, no success! 留学後は言い訳せずに挑戦あるのみ

勝算の低いフェローシップは応募しないのもありだと言いましたが、あくまでそれは大学院生の時です。留学後に海外の研究室の所属になってから応募できるものは少ないので、全て出す勢いで挑戦してみてください。特にテーマが限られていたり年齢制限があるものは、皆が応募できるわけではないのでチャンスです。また留学して1年目しか応募できないものもあるので、募集要項をしっかり確認してください。

また、私たちはアメリカでしたが、留学先の国のフェローシップに応募するのも大切です。英語での申請書作成は初めは骨が折れますが、日本の財団のものより助成額が大きく複数年のものが多く、獲得できた時の威力は大きいです。後は日本に帰った時にも留学中の業績として評価されます。応募にアメリカ国籍が必要なものも多いですが、中には必須でないものもあるので是非探してみてください。

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