若手医師の留学離れが危惧されるなど、医師の研究留学を取り巻く環境は変遷しています。その中でも、2億り夫婦のように二人揃ってポジションを見つけて留学をする医師夫婦は希少なようです。今回は、そんな医師夫婦のポスドク留学の利点についてまとめました。
デメリットは?と思われる方もいるかもしれませんが、私たちに関しては特に思いつきませんでした。二人のキャリアのタイミング、子供がいなかったこと(アメリカで出産)、両親が元気で日本に残す家族の心配がなかったことなどタイミングが良かった事に感謝をしています。
長い医師生活の中でも、二人三脚で海外生活を過ごし、研究者としても共にステップアップしていく経験は夫婦の財産になるので、これから留学を検討されている医師夫婦はぜひ参考にしてください。
ダブルインカムに感謝! ポスドクの給料でも倍になれば心強い
研究留学の心配事の一つとして、収入があると思います。「僕、子供3人いて留学したから1本(1000万円)なくなっちゃったよ。」という猛者がおられたりと、留学帰りの諸先輩方の武勇伝的貧乏話?は尽きません。しかし、実際はポスドクの最低賃金はNIHの給与規定で定められており、確かに収入は勤務医の頃と比較すると半減しますが、それほどひどい状態にはなりません。
具体的にはPhD取得後にすぐに留学しても年間5万ドルの給与が保証されています(ポスドクの給料についての詳細はこちらの記事をご覧ください)。つまり、夫婦でポスドク留学をすると年間10万ドルの収入が見込めるということです。この倍の違いは、物価の高いアメリカで生活していく上では非常に大きな違いで、実際に特に物価の高い西海岸や東海岸エリアに住む家庭のほとんどは共働きです。
下の表は2億り夫婦の留学中の年度ごとの総収入です。私たちはそれぞれ継続していくつかのフェローシップを獲得したり、夫は業績を出し途中から昇給したりで、出産という大出費がありつつも(留学中の出産についてはこちらをご覧ください【準備中】)、事前の予想よりは経済的に恵まれたポスドク生活が送れました。これが一馬力だったら随分違ったと思うので、ダブルインカムには本当に感謝です!
*円換算
夫婦ともに医師・研究者としてのキャリアにプラスになる
「医師、留学」または「医師夫婦、留学」で検索するとたくさんのブログが出てきます。しかし、出てくる体験記のほとんどは、どちらか(多くの場合は妻)が、相手の留学に同行した経験をまとめられたもので、私たちのように夫婦でそれぞれポストを見つけてポスドク留学をする人は希少なようです。
勿論、それぞれ家庭の事情があり、奥さんは子育てに専念する時間にされているケースなどもありますが、折角の機会なので夫婦それぞれがポスドクのポストを見つけキャリアアップするのはおすすめです。留学先探しは少し大変になりますが、医師として研究者として二人三脚でステップアップしていく経験は同志としての結びつきを一層高めてくれ、私たちは今後の人生のよい財産になりました。
また、研究の相談をしたり、書いたグラントを見せ合い意見をもらったりできるのも、医師・研究者夫婦の良い点だと思います。実際に、アメリカでは夫婦ともに研究者として活躍している人たちも多く、同じ施設でそれぞれPIとして研究室を主宰している夫婦もいます。
将来設計(資産運用,家族形成など)について相談するいい期間
研究留学中は、研究に没頭してハードワークをしたとしても勤務医の時よりは自由に使える時間が多く確保できます。また、患者さんの急変や緊急手術がないので、家族との約束を反故にする事もほとんどなく、良い関係を構築しやすくなります。
私たちはこの増えた2人で過ごす時間で、資産運用や投資の勉強を重点的にしたり、子供をどうするかなど将来の家族形成について話し合いました。こういう話は精神的に余裕がないとなかなかできないので、とてもいい期間になりました。
夫は留学前からしっかり資産運用をしていましたが、そこに私も加わることで今後の世帯収入は確実に増えることになりました(2億り妻が投資をはじめた経緯や理由についてはこちらをご覧ください)。方針を定めて仕込みをしておけば、後は1日1,2回の為替や相場のチェックだけでいいので、日本に帰国し勤務医として働きながらも無理なく継続しています。
2億り夫婦の資産運用に関してはこちらの記事をご覧ください。資産運用や投資は勉強をはじめると面白く今ではすっかり夫婦で共通の趣味のようになっています。興味がある方は、FX初心者のための低リスクなステップアップメニューをまとめた2億り夫婦のステップアップFXの記事をご覧いただけると嬉しいです。
やっぱり女性医師にはいい出産のタイミング
私は留学中に第一子を出産しましたが、やはりとてもいいタイミングでした。具体的には下記の点で日本で勤務医をしている時に出産するより、良かったと思います。
- 研究は臨床より自分の裁量で仕事の量・内容の調整がしやすい
- 長時間立っていなければいけない事が少ない
- 勤務時間の自由度が高い
- 夫に妊娠・出産・育児に関わってもらいやすい
私は悪阻が比較的軽く妊娠経過も順調で、かなり楽な部類に入る妊娠生活を送りました。しかし、それでも日本で勤務医をしていたら、どうしても周囲に迷惑をかけてしまうことがあったと思います。その点、研究は基本的に自分の裁量で一人で進めるものであるため調整がしやすく、助かりました。
また、妊娠中は血行動態が大きく変わり静脈還流も悪くなるために、座っていたり歩いたりすると平気なのに立位だと気持ち悪くなるということがしばしばあったので、長時間立っていることが少ないというのもとても有難いことでした。
そして、勤務の自由度が高いというのは夫にも言えることで、受診や出産、その後の育児に、日本の勤務医と比較すると格段に関わってもらいやすい環境でした。職場の人にたくさん頭を下げて仕事を抜けるのは誰でも大きなストレスですが、アメリカでは家族を大事にするのは当然なので、そのような夫の精神的負担が少なく済んだのは良かったです(アメリカでの出産についての記事は近日公開予定です)。
仕事を続けながら子育てをするのが当たり前の環境
アメリカでは日本のように充実した産前・産後休暇や育児休暇制度がなく、Family and Medical Leave Actという産休と育休を合計12週間取得出来るシステムがありますが無給です。
企業によっては有給の育児休暇制度がありますが、ポスドクに対してそのような保障をしてくれる研究機関はまだほとんどないのが現状です。そのため、多くのポスドク妊婦さんは予定日の1,2週間前まで働きます。
また、物価が高くほとんどの世帯が共働き夫婦であるアメリカ西海岸・東海岸の妊婦さんの1/4は産後2,3週間で職場に復帰するため、daycareなどの預かり施設は費用は高いものの充実しています。
私は、母にしばらく来てもらい産後3週間目から半日勤務をはじめました。そして、そのまま長めに生後5か月までは半日勤務のままにし、生後6か月からdaycareを利用しました。
このように、自分や周囲のサポート状況に合わせた勤務ができるのも、アメリカで出産した良い点だったと思います。
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